専門家の支援で取り戻した希望

Aさんは、幼い頃から人づきあいに苦手意識があり、悩みを抱え続けてきました。高校卒業後は社会に出て家庭を築いたものの、子育てへの不安や葛藤から、時に行き過ぎた言動に至ることもありました。職場でも同僚との関係がうまくいかず、職を転々とする日々が続いていたといいます。

しかしながら、自身が発達障害であるという自覚はなく、医療機関を訪れることはありませんでした。ところが40代に入り、家庭生活や仕事が困難を極めるようになり、不眠や気分の落ち込みが続き、生きる意欲の低下まで現れたため、病院で受診したところ、広汎性発達障害と診断されました。

その後、通院を継続しながら1年半後に障害年金の請求を行いましたが、結果は不支給となりました。この結果により心も塞がり、Aさんは障害年金を受け取ることをあきらめてしまいます。その後も症状は徐々に悪化し、追加で「うつ病」と診断され、治療は今も続いています。生活の困難さから支援を受けるようになり、ヘルパーの方が状況を見かねて、札幌障害年金相談センターにご相談くださったことで、再び道が開けました。

今回は2回目の申請となったため、まずは前回の結果を丁寧に見直すことから始めました。個人情報開示請求を通じて過去の申請書類を取り寄せ、そこに記載されていた診断書や病歴・就労状況等申立書の整合性の欠如が主な問題であると考えました。診断書と申立書が、実際の困難な日常生活を十分に伝えきれていなかったことが不支給の一因と判断されました。

このため、初診日の証明書類はそのまま活用しつつ、実際の生活状況に即した新たな診断書と申立書を準備することにしました。うつ病という新たな診断を受けた現状を踏まえ、当センターではあらためて詳細なヒアリングを行い、それを基に医師へ伝える参考資料を作成しました。診断書の内容だけでは伝わりにくい実生活への影響については、病歴・就労状況等申立書でしっかり補足し、全体の整合性を重視して書類の準備を進めました。

その結果、Aさんは「障害基礎年金2級」の認定を受けることができました。過去に一度不支給になっても、正しい手続きを踏めば再申請で認められる可能性があります。障害年金について悩まれている方は、一人で抱え込まず、ぜひ専門家にご相談されることをおすすめいたします。