Aさんは思春期から不安や緊張に悩まされ、進学や就職の節目でも心の調子が不安定になることが多かったようです。特に就職後は、厳しい職場環境での長時間勤務や人間関係の圧力が重なり、次第に心身ともに疲弊していきました。一時は通院を続けていたものの、体調が落ち着いた時期があり、6年ほど通院をやめていた時期もありました。
しかし、仕事と育児の負担が重なり、再び体調を崩すこととなります。回復の兆しが見えない中で将来に対する不安が募り、やがて障害者手帳を取得。その過程で障害年金という制度を知ったものの、申請に踏み切るには多くの疑問と不安が残りました。
年金制度について調べても、自身が対象かどうか判断できず時間だけが過ぎる中、札幌障害年金相談センターのことを知り、相談のご連絡をいただきました。お話を伺った私たちは、まず年金の納付状況と初診日の特定という二つの課題に丁寧に向き合う必要があると感じました。
年金の未納期間が一部に確認されたため、過去の通院中断期間について「社会的治癒」の適用が可能かを慎重に検討しました。社会的治癒とは、病状が一旦回復し、通常の生活を送っていたと見なされることで、次に医療機関を受診した日を初診日とする考え方です。そこで、Aさんがその期間に就労していたことや、海外旅行をしていた証拠としてパスポートの記録などを提出し、通常の生活を営んでいたことを証明しました。
また、初診日の特定では、最初に受診した医療機関の情報が不明確であるという難題がありました。そこで2番目の通院先で取得された証明書の記載内容を精査し、精神科的な診療を受けていた記録が確認できたため、そこを起点とした申請方針を立てました。
一方で、Aさんは現在も一般雇用の形で、週3日・1日4時間半の短時間勤務を続けており、体調に配慮された職場で業務にあたっています。障害年金の審査では、就労状況が支給判断に影響を与える場合もあるため、職場での具体的な勤務状況と体調のバランスについても詳細に説明しました。
こうした一連の手続きと丁寧な資料の提出を重ねた結果、「社会的治癒」が認められ、また初診日も主張通りとされ、最終的にAさんには障害厚生年金3級が認定されました。私たちは、Aさんの勇気ある決断と、粘り強い歩みに敬意を抱いております。今後も寄り添いながら、制度を活用できるようお手伝いしてまいります。