本人の状態に即した方針がもたらした望ましい結果

Aさんは、長年にわたり心の不調を抱えてきました。主な診断はうつ病と解離性障害で、後に軽度の知的障害も判明しました。症状の始まりは、仕事による精神的負担からでした。不眠や意欲の低下が現れたのは、今から約十年前にさかのぼります。

その後も医療機関への通院を続けましたが、症状は改善と悪化を繰り返しました。職場では休職と復職を何度も経験し、転職の回数も多かったことから、安定して働き続けることが非常に難しい状況でした。

ある時期、入院治療を受けていた病院で障害年金の制度を知ることになります。Aさんはご自身で申請に取り組もうとしましたが、必要な書類作成が難しく、札幌障害年金相談センターへお越しになりました。

相談時には、既にうつ病と解離性障害の診断書が揃っていました。加えて、軽度の知的障害の診断があることも明らかになり、申請方針を見直す必要が生じました。知的障害があると初診日が出生時とみなされることから、障害基礎年金の対象と判断されやすくなります。

しかしながら、今回のケースでは知的障害による生活への支障は比較的軽度と判断され、また厚生年金の加入期間中にうつ病を発症していたこともあって、そちらを軸にした方が金銭的にも等級面でも有利と見込まれました。

そこで、知的障害の存在を説明したうえで、主な申請根拠をうつ病および解離性障害とし、障害厚生年金の取得を目指すことになりました。診断書と病歴・就労状況等申立書には、うつ病によって日常生活に著しい困難がある点を明記し、知的障害については影響の程度が小さい旨を記載しました。

その結果、Aさんの状態が適切に伝わり、うつ病が主な障害として認定され、障害厚生年金2級の支給が決定されました。知的障害があると自動的に障害基礎年金の対象と考えがちですが、実際には一人ひとりの状態を丁寧に確認し、最善の方針を立てることが何より大切です。

また、症状の流れや日常生活に与える影響を正確に記載することが、申請成功に向けた鍵になると改めて実感しました。札幌障害年金相談センターは、あくまでも一相談機関として、今後も個々の状況に応じた支援を丁寧に行ってまいります。