大学卒業後も回復しない心の不調と年金受給までの歩み

Aさんは道外の大学に通うため、一人暮らしを始めました。学生生活も後半になると、急に何もやる気が起きなくなり、勉強や家事に手がつかなくなっていきました。入浴や着替えもできない日が増え、次第に他人との関わりにも強い不安を覚えるようになります。授業に出席することも困難になり、精神科を受診したところ、不安障害と診断されました。薬を服用しても効果は薄く、精神的にも身体的にも日常の暮らしを維持できなくなりました。

大学側の支援もあり、なんとか卒業に至りましたが、生活の基盤は崩れていました。地元に戻った後は、家事や食事など、生活のすべてを家族が支えています。外出は通院時に限られ、常に閉じこもった状態が続きました。収入がないまま家族に経済的な負担をかけ続けることに不安を覚えたAさんは、自分の力で何かできないかと模索します。制度を調べるうちに、障害年金の存在を知りました。

自ら手続きを進めるのは難しいと感じたAさんは、札幌障害年金相談センターへ問い合わせました。慎重に事情を伺いながら、可能性を丁寧に検討させていただきました。やり取りはすべてLINEで行い、手続きの進行状況も随時共有いたしました。経過を詳しく確認したところ、学生時代から現在に至るまで、心身の不調により就労が困難な状態であることが明らかでした。

特に問題となったのは、障害認定日時点でAさんが一人暮らしをしていたことです。このような状況は、自立していると誤解されることもあり、障害年金の審査では不利に働く可能性があります。そこで、当時の生活状況を詳細に伺い、資料としてまとめました。買い物にも行けず食事は宅配に頼っていたこと、大学の授業には出席できず、オンラインでの配慮を受けていたこと、掃除や洗濯もほとんどできず、部屋はゴミであふれていたことなど、具体的な実情を整理して医師にお伝えしました。

診断書にはAさんの生活の様子が丁寧に反映され、大学の対応についても記載していただくことができました。記載の根拠となるカルテの時期についても明確にお伝えし、正確な内容になるように配慮しました。そのうえで、申立書や添付資料を整え、提出に至りました。

審査の結果、Aさんは障害基礎年金2級と認定されました。障害認定日の翌月から年金の支給が始まることとなり、Aさんにとって大きな安心につながりました。ご家族の負担も軽減され、今後の生活に少し明るさが戻るきっかけとなりました。

ご相談に際し、私たちはあくまでも寄り添う立場から支援を行いました。制度を適切に活用するためのサポートとして、心を込めて対応いたしました。