2025年12月の障害福祉を振り返る:報酬改定と地域格差、変革の年末
こんにちは。2025年も残すところあとわずかとなった12月、障害福祉業界では来年度以降の制度改正に向けた重要な動きが相次ぎました。全国レベルでは厚生労働省による報酬改定の方向性が示され、地域では札幌市が就労継続支援B型の新規指定停止という大胆な施策を打ち出すなど、制度の転換点を感じさせる月となりました。
今回は、2025年12月16日から31日にかけての障害福祉分野の主要ニュースを、全国の動向と札幌・北海道のローカルな取り組みの両面から整理してお伝えします。
国の方針転換:新規事業所への報酬抑制という衝撃
12月16日に開催された厚生労働省「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」第51回会合では、2026年度(令和8年度)に予定される臨時改定の骨格が明らかになりました。この中で特に注目を集めたのが、新規参入事業所に対する基本報酬の引き下げ方針です。
対象となるのは、就労継続支援B型、グループホーム(日中サービス支援型・介護サービス包括型)、児童発達支援、放課後等デイサービスの4サービス。これらのサービスはいずれも「年間総費用額に占める割合が1%以上」「収支差率が5%以上」「過去3年間の事業所伸び率が毎年5%以上」という条件を満たしており、過剰な新規参入や過度な収益性への懸念から、新規事業所に限定した報酬抑制が検討されています。
この方針の背景には、障害福祉サービス全体の給付費が年々増加し続けている現状があります。特に放課後等デイサービスは、制度創設以降、事業所数が急激に増加し、一部では支援の質よりも収益を優先する事業者の存在が問題視されてきました。厚労省としては、サービスの質を担保しながら持続可能な制度を維持するため、メリハリのある報酬体系への転換を図ろうとしているのです。
既存事業所には影響がないとはいえ、新規参入を検討していた事業者にとっては大きな打撃となります。地域によっては必要なサービスが不足している実態もあるため、この一律的な抑制策が適切なのか、今後も議論が続くことでしょう。
就労支援の質向上へ:加算制度の厳格化
報酬改定に関連して、もう一つ重要な見直しが行われるのが「就労移行支援体制加算」です。この加算は、一般就労への移行実績に応じて報酬が増額される仕組みですが、一部で制度の「悪用事案」が見られたことを背景に、2026年4月から加算算定人数を制限する方向で調整が進んでいます。
具体的には、形式的な就労実績を作るために短期間だけ雇用するケースや、利用者の希望や能力を十分に考慮せずに就労を促すといった問題が指摘されてきました。障害者の真の自立と社会参加を支援するという本来の目的から外れた運用を防ぐため、実態に即した評価基準への見直しが図られます。
この動きは、単なる数値目標の達成ではなく、一人ひとりの障害者が自分らしく働き続けられる環境づくりこそが重要だという、国の姿勢の表れとも言えます。事業者には、より丁寧な個別支援と長期的な定着支援が求められることになるでしょう。
過去最大規模の予算配分と優先順位の明確化
12月下旬には、政府が2026年度予算案を閣議決定し、障害福祉サービス関係費として約1兆7500億円という過去最大規模の予算が計上されました。障害者数の増加やサービス利用の拡大を背景に、前年度からさらに増額された形です。
ただし、予算の配分方針には明確なメリハリがつけられています。「成果を出す就労支援」や「重度障害対応」には重点配分する一方で、それ以外の支援にはより厳しい評価基準が適用される見込みです。これは、限られた財源の中で、真に支援が必要な人に手厚いサービスを届けるという考え方に基づいています。
この方針は、障害福祉事業の経営にも大きな影響を与えることが予想されます。事業者には、単にサービスを提供するだけでなく、その効果や成果を明確に示すことが求められる時代になってきているのです。
雇用と福祉の連携強化:法定雇用率引き上げへ
障害福祉と切り離せないのが、障害者雇用の動向です。2026年7月には、法定雇用率が2.7%へ引き上げられる予定となっており、企業にはさらなる雇用拡大が求められます。また、2025年4月には除外率が一律10%引き下げられたことで、これまで雇用義務の対象外とされてきた業種でも、障害者雇用への取り組みが必要になっています。
さらに注目されるのが、2025年10月から開始された「就労選択支援」という新しい制度です。これは、障害者が自分に合った働き方を選択できるよう、福祉サービスと一般就労の両方の選択肢を比較検討できる支援を提供するものです。これまで福祉と雇用は別々の制度として運用されてきましたが、今後は両者の連携を強化し、障害者一人ひとりのニーズに応じた柔軟な支援が展開されることになります。
札幌市の決断:B型事業所の新規指定停止
全国的な動きと並行して、地域レベルでも大きな動きがありました。札幌市は12月1日付で、就労継続支援B型事業所について、新規事業者指定を原則一時停止するという方針を公表しました。
この決定は、市内の事業所数、計画見込量、供給量、利用量などを総合的に分析した結果として示されたものです。札幌市では近年、B型事業所が急増し、需給バランスに偏りが生じていました。サービスの供給過剰は、事業所間の過度な競争を招き、結果として支援の質の低下につながる恐れがあります。市としては、既存事業所の質的向上と持続可能な運営を優先する判断をしたと言えるでしょう。
この措置は、新規参入を検討していた事業者にとっては厳しい決定ですが、一方で、サービスの質を重視し、利用者本位の支援を実現しようとする市の姿勢を示すものでもあります。今後、他の自治体でも同様の動きが広がる可能性があり、全国の障害福祉事業者が注視する施策となっています。
重度障害者支援の充実:札幌市の補助事業
札幌市では、B型事業所の新規指定停止という厳しい施策を打ち出す一方で、重度障害者への支援は手厚く行っています。「重症心身障がい児者等受入促進事業」では、生活介護、短期入所、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスなどで重度障がい児者を受け入れる事業所に対し、看護師人件費の一部を補助する制度を2025年度も継続しています。
重症心身障がい児者の受け入れには、医療的ケアに対応できる看護師の配置が不可欠ですが、人件費の負担が事業所経営を圧迫する要因となっていました。この補助制度により、事業所は安心して重度障害者を受け入れることができ、利用者にとっても必要なサービスを利用しやすい環境が整備されています。
また、札幌市は2025年度に「障がい福祉施策に係る障がい児者実態等調査」を本格実施します。障がい当事者や障害福祉サービス事業者へのアンケートを通じて実態を把握し、課題を抽出することで、今後の施策立案に活かしていく方針です。このような丁寧な実態把握と施策検討のプロセスは、他の自治体にとっても参考になる取り組みと言えるでしょう。
虐待防止と権利擁護:北海道の継続的な取り組み
北海道では、12月を中心に障がい者虐待防止に関する研修が連続して開催されました。12月4日、15日に続き、2026年1月14日、22日にも関連研修が予定されており、年度末にかけて集中的な人材育成・啓発活動が展開されています。
特に注目されるのが、南北海道知的障がい福祉協会が12月13日に開催した「障がい者虐待防止・権利擁護指導者養成講座伝達研修」です。この研修は、道南地域を中心に、虐待防止と権利擁護の理解を深め、各事業所で指導的役割を果たす人材を育成することを目的としています。
障害福祉サービスにおいて、虐待防止は最も基本的かつ重要な課題です。制度や報酬の議論も大切ですが、その根底には、障害者の尊厳を守り、権利を擁護するという原則がなければなりません。北海道の継続的な研修実施は、この原則を現場に浸透させる地道な努力の表れと言えます。
地域格差の現実:放デイ無償化の広がりと課題
読売新聞の調査によると、北海道内35市のうち、岩見沢市、網走市、美唄市、赤平市、士別市、三笠市、根室市、北広島市の8市で、放課後等デイサービスの利用料が無償化されています。一方、札幌市では2023年から2024年にかけて無償化を求める陳情が市議会に提出されたものの、まだ実現には至っていません。
同じ北海道内でも、自治体によってサービス利用の負担に大きな格差が生じているのが現状です。子育て世帯にとって、放デイの利用料負担は決して小さくありません。地域によって受けられる支援に差があることは、障害児を持つ家族にとって切実な問題です。
この格差は、自治体の財政力だけでなく、障害福祉に対する理解や優先順位の違いも反映しています。今後、国レベルでの制度設計と併せて、地域間格差をどう是正していくかも大きな課題となるでしょう。
まとめ:転換期を迎える障害福祉
2025年12月の障害福祉業界は、国の報酬改定方針の転換、札幌市の新規指定停止、地域ごとの独自施策の展開など、大きな変化の波が押し寄せた月でした。新規事業所への報酬抑制という厳しい措置が示される一方で、過去最大規模の予算配分や重度障害者支援の充実など、メリハリのある政策展開が進んでいます。
これらの動きに共通するのは、「量から質へ」という転換です。サービスの拡大だけを追求するのではなく、真に必要な人に適切な支援を届け、その効果を検証していく。そんな成熟した制度への脱皮が求められているのです。
2026年を迎えるにあたり、障害福祉に関わるすべての人々――利用者、家族、事業者、行政――が協働しながら、持続可能で質の高い支援体制を構築していくことが期待されます。この年末のニュースは、そのための重要な一歩を刻んだと言えるでしょう。
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