およそ十五年前、勤務内容の変更をきっかけに気分の落ち込みや不安があらわれました。A病院を受診後、すぐに休職となり、治療を受けましたが思うような改善は見られず、やがて退職し、外出も難しくなってしまいました。その後の数年間、医療機関への通院もできない状態が続いていました。
その間も不安感や落ち込みは続き、職を安定して続けることが難しくなっていきました。将来への不安がさらに強まり、抑うつ症状や睡眠の問題が悪化し、何とか現状を変えたいと考え、B病院にて再び治療を始めました。現在も継続して通院しており、症状は安定と悪化を繰り返す状態が続いています。
約四年前より、病気への理解が深い企業で非常勤としての勤務が始まりました。雇用形態は一般雇用でしたが、実際には多くの配慮を受けながら働いている状況です。ただ、体調の波が大きく、今後も安定して働き続けられるかどうか不安を抱えていました。経済面でも不安定な中、障害者手帳を取得したことを機に、障害年金制度の存在を知り、当事務所へ申請についてのご相談をいただきました。
障害年金の請求では、まず初診日を明確にする必要があります。Aさんの場合、A病院とB病院の二つの医療機関での受診歴がありましたが、その間に約五年間の通院していない期間が存在していました。
この通院の中断期間があることで、B病院の初診日を申立てることができるかどうかが重要な判断点となりました。ご本人にお話を伺ったところ、体調が悪く外出も困難で、治療を中断していたことがわかりました。そのため、病気が一度治癒したとは認められず、A病院での初診日を基準に申請を進めることになりました。
A病院で初診日の証明書を取得した後、B病院に診断書の依頼を行いました。ただし、Aさんが一般企業にて4年ほど継続して働いている点が審査上の懸念となる可能性がありました。診断書には勤務先や給与などの就労状況を記載する欄があり、形式上は十分に働けているように見える情報となりかねません。
しかし、実際には障害者雇用制度と同等の支援を受けて働けている状態であり、その内容を診断書に反映していただきました。また、診断書では伝えきれない職場での配慮や支援の具体的な状況については、病歴就労状況等申立書に詳しく記載いたしました。
こうした丁寧な書類作成の結果、障害厚生年金三級の認定を受けることができました。私たちは、慎重に状況を伺いながら、必要な情報を適切に整理し、できる限りご本人の立場に寄り添って申請の支援を行ってまいりました。