併合改定について:障害厚生年金)
障害厚生年金を受給中の方で、「新たに別の障害が発生した」「複数の障害があるけれど、等級は変わらないの?」と疑問に思われている方は少なくありません。札幌市でも、障害厚生年金を受給している方が、後から別の障害が発生した場合の対応について相談されるケースが増えています。
障害厚生年金には、受給中に新たな障害が発生した場合、前後の障害を併合して認定し直し、等級を上げることができる制度があります。これを「併合改定請求」(または併合による年金額の改定請求)といいます。
ここでは、札幌市で左腕切断により障害厚生年金2級を受給されている方が、後に両耳の聴覚障害が発生し、併合改定により等級変更を検討されているケースをもとに、障害厚生年金の併合改定制度について詳しく解説します。
障害厚生年金の併合改定とは
障害厚生年金を既に受給している方が、後から新たな障害(その他障害)が発生した場合、前後の障害を併合(合算)して評価し、より上位の等級に該当すれば、年金額を改定できる制度です。
<具体例>
- 左腕切断で2級受給中 → 聴覚障害が発生 → 併合して1級に該当する可能性
- 精神疾患で2級受給中 → 身体障害が発生 → 併合してより重度の2級または1級に該当する可能性
- 片眼失明で3級受給中 → 別の身体障害が発生 → 併合して2級に該当する可能性
このように、単独では軽度の障害でも、複数の障害を併合することで、より上位の等級に認定される可能性があります。
障害厚生年金と障害基礎年金の併合改定の違い
<障害基礎年金の併合認定>
- 国民年金被保険者期間中(または60歳以上65歳未満で国内居住)に発生
- 1級・2級のみ対象
- 単独で1級・2級に該当しない軽度の障害でも併合可能
<障害厚生年金の併合改定>
- 厚生年金被保険者期間中に発生(一部例外あり)
- 1級・2級・3級すべて対象
- より柔軟な併合が可能
上記のケースは障害厚生年金の併合改定に該当します。
この事例のポイント
上記のケースでは以下の特徴があります。
- 既存の障害:左腕切断(上肢の障害)で2級
- 新たな障害:両耳80デシベル(聴覚障害)
- 現在の状況:働くことができない
- 検討すべき対応:併合改定請求により1級への等級変更
左腕切断単独で2級、聴覚障害単独では等級に該当しない可能性がありますが、これらを併合することで1級に該当する可能性があります。
【札幌市実例】左腕切断+聴覚障害で障害厚生年金の併合改定請求|2級から1級への等級変更
質問
私は、数年前に左腕を切断し、障害等級2級の障害厚生年金を受給しています。
ところが先日、両耳にケガをし、両耳とも聴力が80デシベルになってしまいました。身のまわりのことは自分で何とかできますが、働くことができません。障害年金は障害等級が上がらず2級のままなのでしょうか?
回答
障害厚生年金(その権利を取得した当時から引き続き障害等級の1級または2級に該当しない程度の障害の状態にある受給権者に係るものを除く)の受給権者に、被保険者期間中にさらに障害等級の1級または2級に該当しない程度の軽度の障害(その他障害)が発生し、その他障害の認定日以後65歳に達する日の前日(65歳の誕生日の前々日)までに、当該障害厚生年金の支給事由となった障害とその他障害とを併合した障害の程度が、受給中の障害厚生年金の障害の程度より増進したときは、その他障害の障害認定日以後65歳に達する日の前日(65歳の誕生日の前々日)までの間に、障害厚生年金の額の改定を請求することができます。
また、(障害等級1級または2級の)障害厚生年金・障害基礎年金の受給権者に、厚生年金保険の被保険者でなくなった後にその他障害が発生した場合は、併合した障害の程度が障害基礎年金の支給原因となった障害より重たくなるときは、併合した障害の程度に応じて障害厚生年金の額が改定されます。
※平成元年の法律改正以前はこのしくみがなく、障害等級1級または2級の障害厚生年金の受給権者に更に3級または障害等級に該当しない程度の障害が生じた場合は、前後の障害を併合した障害厚生年金を受けることができない等の不合理が生じていましたが、平成元年の法律改正により、新たに「その他障害との併合による年金額の改定」として設けられました。
なお、「その他障害」は、下記の要件を全て満たす必要があります。
(1)障害厚生年金の支給要件となった障害に係る傷病の初診日後に初診日があること。
(2)障害厚生年金の受給要件である保険料納付要件が満たされていること。
(3)初診日において、厚生年金保険の被保険者であること。
障害の程度の認定は、国民年金法施行令別表、厚生年金保険法施行令別表第1および別表第2によって行われるが、これらの別表には、複数の障害を併合した障害については示されていません。このため、国民年金・厚生年金保険障害認定基準の中に、「併合判定参考表」および「併合(加重)認定表」が掲げられており、これらに基づいて併合(加重)認定が行われます。
あなたの場合は、すでに、左腕の切断により2級の障害厚生年金を受給しており、その後、被保険者期間中に両耳を負傷されていますので、前述の「その他障害」による障害の要件に該当しています。
(3)「その他障害」が発生した時点で65歳未満であること。これらの要件を満たす場合、併合改定請求が可能と考えます。
この事例から学ぶ併合改定のポイント
上記のケースから、障害厚生年金の併合改定について押さえておくべき重要なポイントを整理します。
1. 被保険者期間中の発生が原則
障害厚生年金の併合改定は、原則として新たな障害が厚生年金保険の被保険者期間中に発生した場合に請求できます。
ただし、重要な例外があります。
- 障害厚生年金・障害基礎年金(1級または2級)の受給権者が、厚生年金保険の被保険者でなくなった後に「その他障害」が発生した場合でも、併合した障害の程度が障害基礎年金の支給原因となった障害より重いときは、併合した障害の程度に応じて障害厚生年金の額が改定されます。
上記のケースでは、現在厚生年金に加入しているかどうか、また障害基礎年金も受給しているかどうかにより、対応が変わる可能性があります。
2. 65歳までの請求期限
併合改定請求は、新たな障害の障害認定日以後、65歳に達する日の前日(65歳の誕生日の前々日)までに行う必要があります。
上記のケースでは、聴覚障害の障害認定日(原則として聴覚障害の初診日から1年6か月後)以後、65歳になる前日までに請求する必要があります。
3. 併合判定による等級決定
複数の障害を併合する際の等級判定には、「併合判定参考表」が使用されます。
<上記のケースの併合例>
- 左腕切断(上肢の障害):単独で2級
- 両耳80デシベル(聴覚障害):単独では2級に該当しない可能性
- 併合すると:1級に該当する可能性が高い
<聴覚障害の等級基準(参考)>
- 1級:両耳の聴力レベルが100デシベル以上
- 2級:両耳の聴力レベルが90デシベル以上
- 3級:両耳の聴力レベルが70デシベル以上
上記のケースでは両耳80デシベルのため、聴覚障害単独では3級程度ですが、左腕切断(2級)と併合することで1級に該当する可能性があります。
4. 働くことができない状況の重要性
「身のまわりのことは自分で何とかできますが、働くことができません」という状況は、併合改定の判断において重要な要素です。
障害厚生年金の等級判定では:
- 日常生活能力
- 労働能力
の両方が考慮されます。
複数の障害により労働能力が著しく制限されている場合、それが等級判定に反映されます。
障害厚生年金の併合改定の歴史的背景
文章中にもあるように、平成元年の法律改正以前は、1級または2級の障害厚生年金の受給権者に、さらに3級または障害等級に該当しない程度の軽度の障害が生じても、前後の障害を併合した障害厚生年金を受けることができませんでした。
この不合理を解消するため、平成元年の法律改正により「その他障害との併合による年金額の改定」が新設されました。これにより、既に障害年金を受給している方に新たな障害が発生した場合でも、適切に等級が見直されるようになりました。
障害厚生年金1級と2級の違い
併合改定により2級から1級になった場合の影響を理解しておくことが重要です。
<年金額の違い>
- 障害厚生年金1級:報酬比例の年金額 × 1.25
- 障害厚生年金2級:報酬比例の年金額
さらに、障害基礎年金も受給している場合、
- 障害基礎年金1級:年額約102万円
- 障害基礎年金2級:年額約81万6,000円
等級が1級に上がると、生活への影響は大きくなります。
札幌で障害厚生年金の併合改定をお考えの方へ
障害厚生年金を受給中で、新たに別の障害が発生した場合、併合改定により等級を上げられる可能性があります。しかし、併合改定請求には複雑な要件や手続きがあります。
<併合改定を検討すべきケース>
- 障害厚生年金を受給中で、新たな障害が発生した
- 複数の障害があり、それぞれ単独では等級が低い
- 後から発生した障害で労働能力がさらに制限されている
- 複数の障害の組み合わせで、より上位等級に該当する可能性がある
- 日常生活や就労への支障が増している
<具体的な障害の組み合わせ例>
- 上肢障害(手足の障害)+ 聴覚障害
- 上肢障害 + 視覚障害
- 下肢障害 + 内部障害(心臓、腎臓など)
- 精神障害 + 身体障害
- 複数の内部障害の組み合わせ
<専門家への相談をお勧めするケース>
- 新たな障害が併合改定の対象になるか判断できない
- 厚生年金の被保険者期間と新たな障害の発生時期の関係が不明
- 併合判定参考表での等級判定方法が分からない
- 65歳が近く、期限内に請求できるか不安
- 保険料納付要件に不安がある
- 診断書に複数の障害を適切に記載してもらう必要がある
<併合改定請求の手続きの流れ>
- 要件の確認
新たな障害の発生時期、被保険者期間、保険料納付要件、65歳までの期限などを確認 - 等級判定の予測
併合判定参考表を用いて、併合後の等級を予測 - 診断書の取得
既存の障害と新たな障害それぞれについて、現在の状態を記載した診断書を取得 - 併合改定請求書の作成・提出
必要書類を揃えて年金事務所に提出 - 審査
提出された診断書に基づき、併合認定の審査が行われる - 決定
併合後の等級が認められれば、改定後の等級による年金が支払われる
診断書作成のポイント
併合改定請求において、診断書の内容は極めて重要です。
複数の障害を持つ場合の診断書のポイント
<既存の障害(左腕切断)について>
- 現在の上肢の状態
- 日常生活での具体的な支障
- 補装具の使用状況
- 片手での作業の困難さ
<新たな障害(聴覚障害)について>
- 聴力検査の結果(オージオグラム)
- 両耳の聴力レベル(デシベル)
- 補聴器の使用状況と効果
- 日常生活やコミュニケーションへの支障
- ケガの経緯と治療の経過
<複合的な影響について>
- 上肢障害と聴覚障害が組み合わさることでの困難
- 労働能力への影響(なぜ働くことができないのか)
- 日常生活全般への影響
上記のケースでは、「働くことができない」という重要な状況を、両方の障害の組み合わせとして診断書に明確に記載してもらうことが、等級変更への鍵となります。
札幌障害年金相談センターでのサポート内容
私たち札幌障害年金相談センターでは、障害厚生年金の併合改定請求についても専門的にサポートしております。
<具体的なサポート内容>
- 新たな障害が併合改定の対象になるかの判断
- 被保険者期間と障害発生時期の関係確認
- 併合判定参考表による等級予測
- 保険料納付要件や65歳期限の確認
- 複数の障害に関する診断書の内容確認
- 医師への状況説明の橋渡し
- 併合改定請求書類の作成支援
- 提出から決定までのフォロー
特に、併合判定参考表を用いた等級予測は専門的な知識が必要です。「この障害とこの障害を併合すると何級になるのか」を正確に判断し、請求の可能性を見極めることが重要です。
また、複数の障害がある場合、それぞれの障害の診断書をどのように作成してもらうか、そして複合的な影響をどう表現するかが、併合改定の成否を左右します。
札幌市およびその近郊にお住まいで、障害厚生年金受給中に新たな障害が発生した方、複数の障害があり併合改定による等級変更を検討されている方、65歳が近く早急に対応が必要な方は、ぜひ札幌障害年金相談センターにご相談ください。
あなたの複数の障害の状況を詳しくお伺いし、併合改定による等級変更の可能性を一緒に検討させていただきます。
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